† of Ogre~鬼の心理
「今日の夕方、運命が変わったのが気になってね。なにかした?」

夕方のことを問うと、地面から浮いている、白く透き通った彼は穏やかに答えた。

《ちょっとね。予感がしたんだ。だから君に少し作用させてもらった》

「ふうん。その予感は、悪いほうだった?」

ケータイを手にしているわけでもないのになにかと話している僕を、渡ってくる人、通りすぎていく人がいぶかしむ。

気にはしない。今に始まった視線じゃない。

《いい予感じゃなかった。そしてそれは的中した》

はは、と緩く笑う彼の輪郭が、電波の受信が悪いテレビのように、ザザ、とブレた。

「大丈夫?」

そのブレは彼の言う『予感』の結果だろうかと推測する。

彼は、またひどくあっけらかんと笑った。

《いやいやいや、全然大丈夫じゃないよ、これが》

なら、なぜ笑う。

《おかげで目的を果たすための余裕しか、もうないんだ。そうだな時間的猶予も少ないし――明日、――明日いっぱいで、僕は0になる。うーん、困った困った》

だから、それならなぜ、笑う。
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