† of Ogre~鬼の心理
「――……やっぱり、あまりいい気分じゃないな、僕は」

首を横に振る。

青から赤になっていた信号が、また青になる。もちろん渡らない。

横断歩道前で立ち止まったままの僕を、だれもが様々な懸念から見てくる。

飛び出し自殺でもするように、見えているんだろうか。それも、無視する。

パカパカと安っぽく点滅し始める信号のように、彼の笑い声に、中身はない。

《純くん、そんなことを言ってもらっちゃもっと困るよ》

信号は、赤になった。

車が、僕の前でまた、流れ始める。

《ここにいる僕の存在意義を、否定しないでくれよ。もう、赤信号は見飽きたし》

「悟くん……僕は――」

噛み締めた彼の名前は、しかし彼の耳に入らなかったようだ。

1以下であり0にしかなれない彼は、空中に浮いた立ち姿のまま、まぶたを閉じてしまっている。

恐らく、眠ったのだろう。

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