† of Ogre~鬼の心理
「アルは仕事に、仁はバイトに行きなさい。寝てれば治るわ。どうせただの風邪よ」

「風邪って言ってもね、真輝ちゃん」

言って、アルがメガネをくいと押し上げる。

その仕草は、彼が心底なにかに呆れている証拠だ。

「君や僕は、そもそも人間と体のつくりが違うんだよ? 免疫力だって差がある。なのに君は風邪のような症状が出た。尋常じゃないことなんだよ、これは。さっきも言っ」

「尋常ではないことぐらい」

が、私はその彼の言葉、真摯にして余計な配慮を、

「私が一番承知しているわ」

真っ向から見据え、弾き返した。

「たしかにイレギュラーな症状で、ヘンな気分がするわ。私もそれはわかる。でも同時に、アナタ達の手を煩わせる必要もないと、自分でわかるのよ。少なくとも、謎のウイルスだとか、ヤツの呪術による干渉だとか、その線はないと断定できるわ」

「……そう。――でも、」

「しつこい」

心配性の彼にはもう、言わせは、しない。
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