† of Ogre~鬼の心理
―― だいじょうぶ? ――

四度目、訊ねられてようやく、

「うるさい」

と応えてやった。

自分だけに聞こえる、意味のわからない、不思議な声。

これがもしも、昨日アルが言ったような、なにかの兆候なら? ついさっき推測されたとおり、なにかの術ならば?

取り合わないのが一番いい。

それなのに、返事した。

頭がボウとしているせいか……それともこの声が意味もなく気になってしまったからなのか、返事をしても、しまったとは思わなかった。

声は、待っていたかのように、別の言葉を投げてくる。

―― 約束は、覚えてる? ――

「だれとの」

―― 僕との ――

自分のことを僕という知り合いは、アルと風間純以外には、もういない。

そしてどちらとも、特別わざわざ振り返らなければならないような約束はしていない。

「……知らない」

―― 忘れた? ――

「だから、だれと?」

―― 僕との ――

「お前、だれ」

―― 僕だよ ――
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