† of Ogre~鬼の心理
ほー、と口髭を揺らす店長は、やはりあの日のあの雪男に似ている。
思わず、記憶の断片が海馬の奥で風景になり、口が笑みを形作ってしまう。
あれは、今思い出しても実におもしろい体験で――
かららん♪
とその時、店の玄関ベルが鳴った。
牛の首にでもつけられていそうな、大きな鈴だか小さな鐘だかが、軽快にして厳かに響く。
「いらっしゃいませぃっ」せー」
条件反射的に店長に合わせてゆらりと振り返った俺は、
「――出て行け」
コンマ一秒で、相手には見えにくくても、一瞬だけ髪のうちで営業スマイルじみたものを浮かべたことを、叱った。
「な、なに言ってるんだ、草薙? お客さんに失礼だろっ」
当惑する店長の言葉を、
「出てけ」
「こ、こら草薙っ」
「出てけ!」
「おい!!」
「あーいえいえ、ご店主、構いませんとも」
俺は無視し、来訪したヤツはにこやかに手を振って受け止めた。
俺の、がなり声さえも。
思わず、記憶の断片が海馬の奥で風景になり、口が笑みを形作ってしまう。
あれは、今思い出しても実におもしろい体験で――
かららん♪
とその時、店の玄関ベルが鳴った。
牛の首にでもつけられていそうな、大きな鈴だか小さな鐘だかが、軽快にして厳かに響く。
「いらっしゃいませぃっ」せー」
条件反射的に店長に合わせてゆらりと振り返った俺は、
「――出て行け」
コンマ一秒で、相手には見えにくくても、一瞬だけ髪のうちで営業スマイルじみたものを浮かべたことを、叱った。
「な、なに言ってるんだ、草薙? お客さんに失礼だろっ」
当惑する店長の言葉を、
「出てけ」
「こ、こら草薙っ」
「出てけ!」
「おい!!」
「あーいえいえ、ご店主、構いませんとも」
俺は無視し、来訪したヤツはにこやかに手を振って受け止めた。
俺の、がなり声さえも。