† of Ogre~鬼の心理
運ぶ時に、打ち身ならまだしも、裂傷などありえるだろうか。

鑑識もその辺りは疑問に思ったようだが、その傷は別段、刃物でつけられたものではないらしい。

だから運ぶ際にどこかで引っ掻けた……と見られたようだ。

それならそれで、どこで、なにに引っ掻けたのかっていう話にもなるのだけれど。

僕も、本当にただそうなら気には留めない。

でも、現場を仕切っていたのはなにかと小うるさい重さんだし、微妙なところで神経質な日本人が、そんなミスを犯すだろうか。

可能性がないとは言わない。

だけど――それよりも高い可能性があるなら?

そちらの危険性を考慮しなくてどうするんだ。

もちろん、『ただの傷』であることに越したことは、ないんだけど。

「アルさーん、鑑識から昨日の現場の情報、またいくつか入りました」

「うん。それで?」

「ぃえっとですねー」

あくまで可能性という領域で、そのまま流れていってほしいことだが……

この街に、仁と交戦したヤツ以外に、なにか、いる。……かもしれない。

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