† of Ogre~鬼の心理
僕でさえ、今、たったこれしきの情報で困惑している。

いや、困ってはいないが……惑わされているのはたしかだ。

それなのに、不用意に二人へこのことを伝えて余計な疑心、細波を立てるのは、好ましくないと思った。

だから、黙っている。

黙っていることが正解かどうかは、わからないけれど。

「アルさんの見つけた場所が、実際の犯行現場ってのはたしかみたいですね。被害者の血液型と、現場に残っていた血痕の血液型が一致しましたし、証拠品として収拾した傘と鋏から、被害者の指紋も検出されてます」

「うん。そっか」

そして僕が黙っているもうひとつ――彼の亡霊のことは……これこそ、僕の独断だ。

彼のことは、仁には関係ない。が、真輝ちゃんには関係がある。

藤岡悟。

それが、僕の見た亡霊の、生きていた時の名前だ。

彼の姿を見たなんて言ったら、真輝ちゃんはどんな反応をするか……あまり、想像はしたくない。

だから、話してない。
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