† of Ogre~鬼の心理
「現場には争った形跡はなかったみたいですけど、鋏が落ちてるってのが腑に落ちないですね。仮定すると、鋏で抵抗したっていうのが自然かもですけど……鋏には被害者の指紋以外、特別なにも付着してなかったそうです。だとしたら、被害者は抵抗する暇もなかったってことでしょうか? 鑑識は、どうせ抵抗するなら加害者の皮膚でもこそぎ取ってくれてればって嘆いてましたよ」

「まあね」

真輝ちゃんの速さ、握力なら、人間の骨くらい易々砕けるだろう。

いや、人間以外のなんだろうと。たぶん、鉄骨でも握り砕けるかもしれない。

もちろんそれが人間に向けられたら、苦しませたり、抵抗するいとまなど、うたかたも与えるわけがない。

ましてや彼女のスピードに目が追いつける人間など……いようはずもない。

抵抗など、翼を削がれて落下していく小鳥が足をばたつかせるほど無意味だろう。

(そんな速さを誇る彼女に、藤岡悟のことを話したら――)

たぶん、手に負えなくなる。
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