† of Ogre~鬼の心理
「まあ、ただの『憶測』だけどね。言葉遊びに過ぎないよ」

肩を竦めてみせても、僕の口から漏れた『現実味』はすでに、内村の中で生々しい色を持ち始めている。

見えないなにかが着色されたと勘違いしている。

推測とは、正解とは限らないのに言葉となって世界に生まれた途端、現実と同等にもなる。おもしろいことだ。

「憶測ったって、それが当たってたら大変じゃないんですか!」

そう、当たっていたら大変だろう。

当たっていないから、僕は平然としていられる。

「いやだから、根拠もないしね」

さすがの泡の食いように、少し苦笑した。

根拠がないのはたしかだし、事件がさらに発展するなんてこと、まずありえない。

真輝ちゃんがあんなヘマを短期間に起こすなんてないし、僕達がさせないから。

そうわかっているからこそ出た、嘲りにも近い笑いだった。
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