† of Ogre~鬼の心理
―― さあ、真輝。こっちだよ。がんばって ――

声に励まされ、私はいつしか俯けていた顔をあげた。いっそ、空をまで見上げる。

雲より高いところで、太陽は南中に近づこうとしていた。

やや視線を落とせば、オレンジに縁取られたカーブミラーに私が映っている。

自分で見てもわかるほど、顔が赤い。肩で息をしているし、顔や首筋には、汗で髪が貼りついていた。

―― さあ、真輝。早く。時間がないよ ――

ひうるりと、また風が吹いていく。

やはりそれは、北から南への道しるべか。

私は苦笑してやった。

「急かすんじゃないわ――藤岡」

密かに、懐の中に入れているものを握り締める。

それは硬質に、堅実に、明確に、そこに、あった。
< 208 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop