† of Ogre~鬼の心理
第二十六節
† 第二十六節
電話の向こうから聞こえる声は、僕の知らない、記憶していない、男の子の声だった。
いや、男の子といっていいのだろうか。
たぶん、二十歳にはなっていないだろうけど、声変わりはとうに迎えたらしき音階。
できるのなら一男性の声と認識してあげたい。ところが、こういう電話を初めてかけたらしい不安と、まったく見ず知らずどころか聞かず知らずである僕を相手にしているということもあって、声はとても幼く、若いように感じた。
それとも、幼さや若さを演じているのか。
「名前を教えてもらえるかな」
と僕は言った。これで三度目だ。
『風間純です』
と彼は答えた。これで三度目だ。
「それじゃあ、僕への用件を言ってもらえるかな」
と僕は訊いた。これで三度目だ。
『それは、その……』
と彼は澱んだ。これで三度目だ。
さっきからこれの繰り返し。そう、三度目。
まるで立ち上がりの悪いパソコンを相手にしているみたいだ。電気は通っているのに、電源スイッチが反応しない。そんなもどかしさ。
さすがの僕もお手上げだ。
電話の向こうから聞こえる声は、僕の知らない、記憶していない、男の子の声だった。
いや、男の子といっていいのだろうか。
たぶん、二十歳にはなっていないだろうけど、声変わりはとうに迎えたらしき音階。
できるのなら一男性の声と認識してあげたい。ところが、こういう電話を初めてかけたらしい不安と、まったく見ず知らずどころか聞かず知らずである僕を相手にしているということもあって、声はとても幼く、若いように感じた。
それとも、幼さや若さを演じているのか。
「名前を教えてもらえるかな」
と僕は言った。これで三度目だ。
『風間純です』
と彼は答えた。これで三度目だ。
「それじゃあ、僕への用件を言ってもらえるかな」
と僕は訊いた。これで三度目だ。
『それは、その……』
と彼は澱んだ。これで三度目だ。
さっきからこれの繰り返し。そう、三度目。
まるで立ち上がりの悪いパソコンを相手にしているみたいだ。電気は通っているのに、電源スイッチが反応しない。そんなもどかしさ。
さすがの僕もお手上げだ。