† of Ogre~鬼の心理
彼の意図と質問の意図、双方を理解しないことには、この受話器は下ろせない。のだけど……手詰まりなのは事実だ。

肝心の『つまりどういうことなのか』を三度質問して、三度とも濁されてしまった。

自分から電話をかけてきたということは、彼から僕に話があったはずだ。なのに、今、それを言わない。濁す。言いよどむ。

おかしい。てんで奇妙だった。

こうなると否応なく、あの藤岡悟という少年を思い出してしまう。

彼もこんな感じに、風に吹かれる木の葉みたいな、捉えどころない少年だった。

右といったかと思えば左で、左といったかと思えば右。逆にそんな性質を予測すると、今度はいきなり上とか下とか言い出す少年だった。

電話だけの短いやり取りで判断するのは悪いけど、僕には、藤岡悟とこの風間純が、同類項に思えてならなかった。

「もう一度訊くよ、風間くん」

『はい』

声そのものは、しっかりしているんだ。

なのにどうして肝心な部分に答えてくれないのか……。

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