† of Ogre~鬼の心理

第二十七節

† 第二十七節



立ち止まった交差点は、普段使わない南区通りだった。

昼と朝との中間である今、中心街からやや外れたこの通りは、車もまばらだ。

スクランブル式の横断歩道を敷くほど大きくはない、一般的な交差点。歩行者信号が縦の道と横の道を升型に結ぶその区域――車道を飛び越えた向かい、白と黒の縞を挟んだ先に、それはいた。

「ご機嫌、いかがかしら? 東城の〝鬼姫〟」

違和感というものを核に、存在感というワンピースを纏った女。

どこか幽鬼を思わせる白い肌に、色素が薄く長い黒髪。

手ぶらにもかかわらず、斧鉞か銃剣でも携帯しているかのような剣呑な気配が、獣の荒い鼻息のように漏出している。

仁から聞いていた服装でもそうだが……

一目で、わかった。

「――昨日は、うちの魔法使いがお世話になったわね」

目の前の女が、アルや仁の言っていた『ヤツ』であると。

なにより、私のことを〝鬼姫〟と呼ぶ人間など、ひどく限定されている。

この女はすなわち、敵だ。そう、一目でわかった。

ただ同時に、私の求めていた存在がここにないことも、わかってしまった。
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