† of Ogre~鬼の心理
「今日一日は肌身離さず持ち歩いとけ。今朝からお前、イヤな気配が残りすぎだ。見るヤツが見れば、あっという間に勘づかれるぞ」

「……」

それは、非常にまずい。

恐らく残留した私の高揚が、まだこの体から漏洩しているのだろう。

「わかった」

手の中でくしゃくしゃになっている紙切れを、そのままスカートのポケットへ入れる。

仁はあまりいい性格はしてないし、ひねくれ者だが、こういう妙な気配りはできるヤツだ。

もっとも、だからこそ一緒に暮らしているのだが。

玄関へ向き直り、ローファーのつま先を二、三度蹴りながら――

ついでとして、私も妙な気配りをしてやった。

「仁、アナタは言葉遣いと見た目を意識したほうがいいわ」

「あん?」

「自分でわかってるかしら? アナタ、実はすごく美味しそうな女なんだもの。その辺の男にはもったいないくらいね。せっかくだから磨いても損はないわよ?」

「……お前が言うと世辞にすら聞こえんな。ほっとけ」

やはり余計なお世話だったか。

私は仁から蹴りを食らった。
< 25 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop