† of Ogre~鬼の心理

独節

♪ 独節



しゃらんしゃらん。

私の存在意義は、人々の希った先に縛られている。

すなわちは、人々に仇をなす、凶悪な人外の駆逐。

しゃらんしゃらん。

私の行動指針は、人々の希った先に縛られている。

すなわちは、土地に害をなす、凶暴な人外の排除。

しゃらんしゃらん。

しかしそれらは、時代とともに少しずつ、変わる。

人外は凶暴ではなくなり、秩序を保つようになる。

しゃらんしゃらん。

人間は、隠遁生活を送る人外らを、徐々に忘れた。

両者の狭間が深まり、世界の変化は闇に埋まった。

私の存在意義が、行動指針が潰えたとさえ思った。

しゃらんしゃらん。

ゆえにこそ、私は自己の行動を縮小していたのだ。

しゃらんしゃらん。

かの東城、四方最強と呼ばれる〝鬼姫〟の、覚醒。

それが私の存在意義、そして行動指針にかかった。

ゆえにこそ、私は己のすべきことを、思い出した。

しゃらんしゃらん。

人々の希った先に私は星霜、縛りつけられている。

この土地を守ってほしい。永遠に、守ってほしい。

この土地を食らう者――そはなんぞや。鬼である。

しからば、私のなすべきは鬼の駆逐、排除なのだ。

しゃらんしゃらん。

三百年前はなしえなかったそれを、今、この時に。

東城の〝鬼姫〟――その覚醒が、私を突き動かす。

邪を煤と見立てし、破魔の力――聖音法術を操る。

しゃらんしゃらん。

この、いつまでも鳴り止まぬ心音が、果てるまで。
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