† of Ogre~鬼の心理

第三十節

† 第三十節



確実に、女の思惑へはめられていることは承知していた。

女は、わたくしを少しずつだが確かに、ひと気のないほうひと気のないほうへとおびき寄せている。

わたくしの跳躍、その着地点を狙い、不可視の殺傷力を放擲してくる。

あるいは、逃亡するかのように見せて、わたくしを誘い出している。

腕を振るだけで殺意を飛ばしてくるのは、厄介ではある。が、わたくしの感性ならば、それらを回避するも難ではない。

わかっている。すでに、貴様の思惑など見切っているとも。臭い、臭い、においがする。

人間が頭を回転させ、構築する算段、黒く積み上げる画策、権謀術数を巡らせるにおいが、強く漂っている。そう、殺気を感じるとも。

人間の、わたくしを見る目が、なによりも物語っている。

わたくしを討ち滅ぼさんと、躍起になっているのだ。

他者を殺そうとするものの目の輝きが、いかなものか……わたくしは重々知っている。
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