† of Ogre~鬼の心理
「いつまでかくれんぼをしているつもりか、女」

わたくしの声は、昏い洞窟の奥の奥まで三重四重となって響いた。

その声が壁に当たり、天井に当たり跳ね返ってくるまでに、わたくしはヤツの存在を確かめる。

息を潜め秘め、時を図っているのが、感じられる。

超感覚的でしかないが、それは、絶対の事実だ。ヤツは、奇襲を狙っている。

だが、そんなもの、なんになろう。

「そちらが隠れるのならば、鬼はわたくしでよいな?」

  、、、、
このわたくしが『鬼役』とは、笑えた。が、今は口角を吊り上げるだけで、留めておこう。

わたくしにとって第一目標は、あの女を掴み出し、あの素肌を食い破ってやることだ。

つい先日食した女の食感を思い出す。

この牙でぷつりと肌の張力を破る瞬間、吹き出す血の暖かさ、そして五臓六腑にまで浸透するあの香り、背筋を走るこそばゆいような快感……

人食いにおける高揚を想像するだけで頬が緩み、吐息が熱くなった。

そう、熱いのだ。とても熱い。熱くてたまらない。発汗が収まらぬ。早く、この衝動を、発散しなければ。

女を狩ることで。

鬼として。
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