† of Ogre~鬼の心理

第三十一節

† 第三十一節



《つまり、あの女は生きていないんだね?》

という確認に、見えないながら頷いてやった。電話もそうだが、相手の姿が見えなくとも動作がついてくるのは、人間の性だろうか。

「ああ、あの女は実質、数百年の昔に死んでいる。土地の歴史で言うなら、三百年は前か」

アルのために、言葉を付け加える。

「即身仏っていうのはな、生きた人間がそのまま仏になろうっていうヤツだ。坊さんやら巫女やらが経を読みながら、穴の中で餓死する。そのまあ、ミイラみたいなもんを仏として奉るわけだ。土地と土地の人間を、死してなお守ろう、守ってもらおうって考えだな」

《その即身仏が、彼女か》

うむ、とまたしても頷いてしまう。

「そう。それなら、お前の関知した力の回復……いや違うな、存在の復元現象も説明できる」

《というと?》

返答に、半拍開けた。
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