† of Ogre~鬼の心理
第三十二節
† 第三十二節
「動くな、警察だ!」
と言ってみた。
現場は大木市中心街南区、大木アンダーストリート完成予定地。
打ちっぱなしのコンクリートが闇の中で灰色に見える空間、僕の声は思いのほか、いや、思った以上に響いた。
工事の中緩みの時期にあるのか、それとも中心街西区で建造中の大木ホーンタワーに人件費やらが引っ張られているのか、しばらく手付かずらしいトンネル内の空気はひどく淀んでいた。とても埃臭い。
先客が暴れていたから細かな塵が舞っていて、それが目に入ると少し涙が出た。
入り口の明かりが僕のずっと後方で、ビスケットサイズにまで縮小されてしまうほど入ったところ。
暗がりでありながら僕の目は、しかと例の女を、そして床に倒れている真輝ちゃんを確認している。
距離にして二十メートル、あるだろう。けれど、しっかり見える。嗅げる。
(血のにおいがする……芳醇で、とてもたぎった血のにおい……真輝ちゃんの血かあ……)
少し、「どんな味がするんだろう」なんてことを考えてしまったけれど、今はそんな場合じゃない。
残念だけど。すごく残念だけど、今はそんな場合じゃない。
「動くな、警察だ!」
と言ってみた。
現場は大木市中心街南区、大木アンダーストリート完成予定地。
打ちっぱなしのコンクリートが闇の中で灰色に見える空間、僕の声は思いのほか、いや、思った以上に響いた。
工事の中緩みの時期にあるのか、それとも中心街西区で建造中の大木ホーンタワーに人件費やらが引っ張られているのか、しばらく手付かずらしいトンネル内の空気はひどく淀んでいた。とても埃臭い。
先客が暴れていたから細かな塵が舞っていて、それが目に入ると少し涙が出た。
入り口の明かりが僕のずっと後方で、ビスケットサイズにまで縮小されてしまうほど入ったところ。
暗がりでありながら僕の目は、しかと例の女を、そして床に倒れている真輝ちゃんを確認している。
距離にして二十メートル、あるだろう。けれど、しっかり見える。嗅げる。
(血のにおいがする……芳醇で、とてもたぎった血のにおい……真輝ちゃんの血かあ……)
少し、「どんな味がするんだろう」なんてことを考えてしまったけれど、今はそんな場合じゃない。
残念だけど。すごく残念だけど、今はそんな場合じゃない。