† of Ogre~鬼の心理
美女が野獣のように猛った殺気ほど恐ろしいものはない、と僕は思っている。

今までどれだけの戦場を乗り越えたか、どれだけの時を生きてきたかなんて関係ない。

今は今として明確な戦慄が、僕の背筋を撫で触った。ぞっとする。

「仁っ! 仁、早く!!」

《繋がった!!》

焦った僕から、十メートルほど横手。

並び立っていた電信柱の一本で、刻印が紅蓮に発光した。

それは宙へ飛び出すと一気に拡張され、奇妙な文字が縁を飾る円形、ゲートとなる。

その中央が、カメラレンズのようにパッと開いた。

こことは違う景色が、そこに。

こことは違う場所が、向こうに。

「アル!」

と、開かれた『門』の向こうから、仁本人が手を差し出してくる。

それを、

「っ、仁!」

「逃がす、」

僕は、

「アル早く掴」

「もの、」

懸命に伸ばした手で、

「くっ……!」

「ですか――!!」

掴む。

瞬間、体が圧縮されるような引力を感じ、空中にあった僕は――
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