† of Ogre~鬼の心理
――と、梅雨時で湿気も気温も半端に高いせいか、遠くからでも早速と傷んだ遺体の腐臭を嗅いだ。

固まりかけの糊のように、ねっとりと鼻先にまとわりつくくせに、なんとも突き刺さるようなにおい。

ああ……。

こんな時は、たとえ空を飛べなくても、人間が羨ましい。

あのシートをめくらない限り、この気だるい空気を吸わなくてもいいのだから。



そうして、

「……――へえ。うん、ひどいね」

率直な感想と共に、三十センチほどめくっていたシートを下ろした。

遺体は、鮮やかなほど瞬発的に加えられた圧力で、見事ひしゃげていた。

さらに言えば、彼女の習癖通り、肉の一部分がこそぎ取られたような痕跡があった。

端的に言おう。

シートの下にあったのは、『崩れた肉』だった。
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