† of Ogre~鬼の心理
(なるほど、ご機嫌だったわけだね)

まあ、遺体になってなお、肉として見るなら美味そうな女だった。

腐臭はまったくもっていただけないが、肉質だけ見れば、珍しく当たりろう。

もっとも、僕の専門は肉じゃないけど。

「顔色ひとつ変えないですね、相変わらず」

内村が、僕の斜め後ろに立った。

相変わらず――それが内村の口癖だと思う。

僕は肩を竦めた。

「仕事だからね。いちいち胸を痛めていたり不快さを扇情されていたら、頭の回転に差し支えるさ。慣れだよ」

とはいえとはいえ、実は僕の慣れも、かなりの年月をかけて培ったものだから……

まだ二十代の内村には、残りの生涯をすべてこの手のあらゆる凶悪事件に捧げたところで、その境地に至れるかどうかは保証できない。
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