† of Ogre~鬼の心理
どうして、こうもすっぽり忘れていたのか。

俺はたしかに人の顔や名前やらを覚えるのは苦手だが、綺麗さっぱり過ぎるこの忘却に、どうもあのガキの手が加わっていそうで気に食わない。

舌打ちが、風に混じった。

「っ、一ツ橋といい、古来の巫女といい、挙げ句には運命観察のガキの亡霊か……かー、イヤなもんばっかり思い出す日だ、ったく」

「えっ、一ツ橋さんが来てるの?」

「アイツに『さん』なんてつけるな、気色悪い」

目の前にいるのはアルだが――アルも黒い服を着ている。

一ツ橋の名前を聞くだけでつい、誤って、そう誤りにも誤って、アルに唾を吐きかけてしまいそうだ。

もちろん、だから、誤ってだ、誤って。

「それよりも、」

と、その解せん二人について質問を続行――

「その、亡霊になったはずの藤岡少年の話を、」

――した俺は、
< 313 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop