† of Ogre~鬼の心理
女の気配は、わざわざ探るまでもない。

あのアンダーストリートでアルに……そして俺に出し抜かれたのがよほど悔しいのか、それともプライドが高いのか、隠しても隠しきれない殺気を感知している。

いいや、そもそも隠すつもりもないだろう。

むしろ、「自分はここにいる」と高らかな声を朗々轟かせながら突進していく、武士のようでさえある。

時代錯誤――とは思ったが、いや待て。あの女の時代からしてみれば、その直情径行こそ、らしいのかもしれない。

なんにせよ、気配と居所が読みやすいのは、俺にとって好都合だ。

「刻印、第二十六番から第三十五番までを一斉起動。それぞれを『窓』と定義し、各刻印からの情報を本魔法陣まで転送せよ」

装置の電源を入れたなら、次はコントロールパネルをいじればいい。

言霊に従い、南に据えている護符の文字がぺりぺりと剥がれ数条、蛇のように空中へ這い上がっていく。

まるで文字でできたいわしの大群か、吹き荒ぶ桜吹雪だ。

それらは俺の正面で弧を描く、ワイドスクリーンとして機能する。

NASAの管制室もかくや、浮遊する文字のひとつひとつが膨張して宙に固定、『窓』となる。
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