† of Ogre~鬼の心理
今、私は彼を前になにをしたいのだろう。

抱きつきたいのだろうか。それとも殴り倒したいのだろうか。これ以上ない罵倒を浴びせたいのか。あるいは涙を流したいのか。

どれも違うようで、どれもやりたい。やってしまいたい。

私は、藤岡悟の前では、正常を保てない。正常を保てなくなっている。

だから、私はずっと求めていたんだ。アナタを。

それでも、私はずっと求めていたんだ。アナタを。

藤岡悟を。

なのに……

―― 久しぶり、かあ。僕はつい昨日、そしてついさっきも、君と会話してた気がするのになぁ ――

「……私は、そうは思わない。思えない」

―― そう。まあね。実際はそうじゃない。ちゃんと知ってるよ。君は僕にして見れば、『今』から一年以上あとの君なんだね。同時に、僕は君の中にある最も新しい僕から、最低一年以上前の僕だ ――

「アナタは、アナタだわ」

―― でも違う ――

……なのに、アナタはそんなことを言う。

わかっている。この藤岡悟は私が孤独を味わっている間、機能していなかったのだから。
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