† of Ogre~鬼の心理
こうべを垂れて、数十センチの高みからゆっくりと降下してきた彼は、私と目線を同じくする。実体のないスニーカーが、アスファルトを踏んだ。

半透明、横断歩道を挟んだ向こうの景色――あの蹴り落とした信号機が透けて見える手が、私へ伸ばされる。

―― けれど、僕は今目覚めた。それは僕が僕に課した、君への約束なんだ ――

約束……彼が自らに課したそれは、思念体という形まで取って、残っている――けれど。

「アナタ、いつも一方的なのよ」

―― それでも僕は約束を守るよ、真輝 ――

私は、

―― 僕は君を守る。君を守る鞘になる。それが存在意義だ ――

「…………そうね。――そう……そうよ。アナタは私を守って。守りなさい、藤岡」

―― うん。仰せのままに ――

その手が頬に触れてくるのを待ち構え、

待ち望み、待ち焦がれ、さらには待ち遠しいとさえ感じた、

まさに、その時だった。
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