† of Ogre~鬼の心理
二人揃って数メートルのダイブを味わい、路上を転がった。

匍匐前進のような格好で止まった私に、同じ姿勢のアルが叫んでくる。

「真輝ちゃん、今は正気かい!?」

こんな時に、いったいどういう質問だろうか。

私は常に、常に正気だ。

「そんな質問に答えているいとまはないわ。わかるでしょう?」

じゃしゃん! と、答えている間に再び、集団で突き下ろされた錫杖の鈴と環が啼いた。

新幹線か十トントラックか、そんな、高速で移動する超重量のなにかが肉薄してくる。

私達は反射的な危機感から、低い跳躍で回避した。

音色は清浄なくせに乱暴過ぎる青白さが、分かれ分かれに飛んだ私達の間を通過し、車道向こうの電信柱に命中する。

数人からの同時発動もあるせいだろう、途方もない威力が一瞬で電信柱の下半分を砂にまで分解した。暴圧の通った路面も、巨大なパワーショベルで抉られたように溝ができている。

「真輝ちゃん!」

と、向こう二十メートルほど先から、アルが叫んだ。

なぜそんなことになっているのか知らないが、袖は破れ裾は裂け、スーツはぼろぼろ、破れたシャツがいっそフリルのように見える。
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