† of Ogre~鬼の心理
金切り声といって、間違いなかった。

悶えるような苦しむような喜ぶような悲しむような嘆くような狂ったような、――いいやもはや、金切り『声』とは言えない絶叫。

強烈な感情ばかりを燃え上がらせて、真輝ちゃんが右手を突き出す。

(また、ウリエルの!?)

来る、と思ったのは正解だった。

紅蓮というにはあまりにも明々とし、また赤々とした怒濤が、舌の根から先まで使ってべろりと舐めるように道路を走る。

僕はとっさに霧化して舞い上がった。逃げだった。

上空から見たその様はむしろ、マグマの行進だ。飲まれた標識や電信柱は下半分が一瞬で溶解し、そこら辺に放置されていた自転車や、路傍のガードレールが蒸気をあげた。

炎が去った時、すでにどちらも赫灼まで色を変えて、路面でじりじりと異常な水溜まりになっている。

当然、女がその火力に耐えられるはずが無い。

空間を焼くだけ焼いて炎を収束させたさせた真輝ちゃんの正面、扇を開いた形でおよそ百六十度圏内に、女の姿などありはしなかった。

ただ、焼き払われたもの、溶解されたもの、そして汗を掻いたように表面だけとろけ、湯気をあげるアスファルトだけが、真輝ちゃんの炎の痕跡だった。
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