† of Ogre~鬼の心理
拳が宙を裂く合間、炎が尾を引いて軌跡を描く。流星のようになった拳の先から撃ち出されたのは、濃縮されて、いっそオレンジか黄色にまで光度を増した、炎の光線。

あの仁の十八番ともいえる技を、そのまま十倍以上増幅させたような、大本流だった。

生け垣を一瞬で蒸発させ、地面を芝生を一瞬で炭化させ、劫火が捉えたのはひじり公園の礎。

青白い燐を纏っていた清浄すぎるそれが、「あ」とか「げ」とか、「え」なんて思っているうちに飲み込まれてしまう。

しゃらん――と、半端な鈴の音が聞こえた――なんて、幻聴さえ許さない圧倒的火力で、すべては焼き食われていた。

周囲に漂っていた清浄さと燐が、まやかしの霧が晴れ薄れるように、消える。

潰されたんだ。

そう、真輝ちゃんは今のたった一撃で、この地に古からある即身仏を葬り去ってしまったのだ。

結界だって、きっとあったはずなのに。それを、ものともせずに……。

一撃、必殺。

なんていう火力、なんていう蹂躙、なんて、なんていう……

(器、なんだ)

僕は、東城という血筋が間違いなく、恐ろしくなった。

あまりに呆気ない女の最期に、同情さえしそうになる。
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