† of Ｏgre～鬼の心理
三階建てほどのビルなんて、さしたる高さじゃない。

当然、余裕の体で着地した僕は――靴が路面と挨拶した瞬間に戦慄した。

アスファルトが、溶けている。高熱を帯びている。じゅああ、という恐々の高温が靴底をも溶かし、熱が足の裏へ伝わってくる。

蒸気と、ゴムの焼ける臭さが、僕の鼻を刺した。文字通りの、焦熱地獄。表情筋が否応なく歪む。

その原因たる、天を仰いでいた真輝ちゃんが、

「いいぃぃぃぃぃいいいいい！」

「真輝ちゃん!?　真輝ちゃん！　真輝ちゃんっ!!」

「やあぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

頭を押さえていた両手を、真横へ広げた。

なにかを解放するような、受け入れるような、あるいは追い払うような、絶叫が高く響き昇る。

大音声は、現象へ及ぶ。

響き昇った声を追うように、真輝ちゃんの狂った裂帛を、炎の乱気流が体現した。火柱が、真輝ちゃんを芯にして吹き上がる。

熱量と熱波が半端じゃない。大差の気温で気流が掻き乱されているのか、それとも真輝ちゃん自身の存在が荒れ溢れているのか、この僕が、一歩たりとも動くことができない。

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