† of Ogre~鬼の心理




焼け爛れたアスファルトと、焼き切れて地を打っている電線、アイスのようにとろけたまま硬直した電信柱や、枝葉の焦げた木々だけが残るここは――大木市の南区、塔野山へ向かう途中のひじり交差点。

「真輝ちゃん……」

と、十数メートル離れたところから、アルが呼びかけてくる。

「なに」

私は、彼へ振り返った。

見れば見るほど、彼はひどい格好をしている。

――と思ったが、それは私も同じだ。今さら気付いたが、女に裂かれたひとえの正面は、大変なことになっていた。

密かに慌てて襟を引き寄せると、アルがスーツの上着をかけてきた。

なにがあったかはともかく、彼のブラックジャケットも凄惨なありさまだが……ないよりはマシだ。素直に羽織っておく。

長身から見下ろしてくるアルが、ゆっくりと、言葉の発音自体を確認するように、問うてきた。

「真輝ちゃん……もう、大丈夫なのかな?」

それは、心配性の彼らしい、確認に重ねる確認だ。

私はひとつ、はっきりと頷くことで彼の不安を払拭してやった。

「心配ないわ。藤岡が、抑えてくれた。あの時と同じよ」

「……そう、ならいいんだ」
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