† of Ogre~鬼の心理
つるつるとした手触りの安いエセ革張りソファーに、仁は深く寄りかかる。

恐らく卓の下では、その長い足がだいぶ私のほうへ侵入しているだろう。

「警察ってぇ仕事も厄介なもんだな。つっても、組織の体裁を保持しなきゃなんねぇのは、現代アスファルトじゃ当然か」

「そうね。当然だわ」

もう一口、冷やを飲む。やはり、必要以上に冷たい。唇が赤くなってしまったかもしれない。指先もひりりと冷えた。

冷やを置いて、少し横へよけておく。

なんだかさっきから、「そうね」ばかり言っている気がした。

たぶん、いや恐らく、疲れているのだろう。熱もだるさも藤岡のおかげで引いたが、それでもやはり、疲れているのだろう。

自分でも、見えない部分で。

今日は一日を通して、衝動を暴発させ、心理を酷使したから。

私と仁は夕食を取りにファミレスに来ていた。昨日と同じファミレス、昨日と同じ席にだ。

ただしアルはいない。たとえあの女を撃破したところで、アルには刑事という職がある。

さらに言えば……女は片付いたにしても、世で言う『猟奇事件』である私の食い残しは、まだ解決していないのだ。
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