† of Ogre~鬼の心理
くだないことを思い返すが……

誇りだ、高潔だ純血だ、そんなことばかり私の家は言っていた。東城家といえば、それなりの屋敷なのだ。だから、その教育方針は仕方がない。

幼い頃からずっと、姿勢にはとやかくと口を出された。自然と、普段から伸ばすことを心がけるようになってしまった背筋を、だらりと崩す。

公然の場で、背もたれに後頭部が当たるほどだらけるのは、初めてだ。

卓のへりが、私の胸くらいまで来た。足の先が、対面のソファーに当たった。

穏やかで落ち着く雰囲気を演出するファミレスの照明は、クリームっぽいオレンジ色だ。それにかかる傘が、実はベッド脇などに置かれるスタンドライトのような円錐だということも、初めて知った。

仰向けのまま、ごそりと身じろぐ。右手をどうにか、スカートのポケットへ入れた。固い感触。引き抜く。

黒い握り。今はその狂気を伏せているこれは、ナイフ。

私と同じ私、私と違う私、そして私をも示す、代名詞。

真鬼は、私にとって銃弾であり刃であり、すなわち狂気だ。

真輝は、私にとって拳銃であり柄であり、すなわち正気だ。

それらを映し出した物体が、この、彼からの唯一の贈り物。

黒い握り。折りたたみ可能で携行型の、バタフライナイフ。
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