† of Ogre~鬼の心理
かしゃん。

と、ボタンひとつでその凶器は狂気の白銀を見せた。照明を浴びて今は、黄昏にも似た条を反射させている。

くるりと刃を返す。もう一度くるりと返す。どちらの面にも、私の黒眼がきらりと映った。

ボタンひとつで現れる本質は、そう、私と同じなのだ。

どれだけ鞘に、柄にその狂いを隠そうと、なくなったわけではない。鬼の心理は、このナイフの刃が如く、私から消えることはない。なくなることはない。

存在が異なるものが、同じ心理に至るはずがない。ただの人間同士でさえ同じ心理に目覚めるはずがないのだから、別種の存在が理解し合える心理状況など、ありえない。

相手のことがわかるなど、エゴに過ぎない。

それでも、彼は私のことをわかると言った。わかると言い張った。そして行動までした。

だから彼は、いなくなってもなお、彼だったのだろう。

あの言葉が、今でも胸に響いている。悔しいが、とても耳に気持ちいい残響だ。
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