† of Ogre~鬼の心理
「こんばんは、フジオカ――と真輝に呼ばれる少年」

と、挨拶は返しておいた。

ついでだから、

「なんなんだ、こんな時間に。真輝のストーカーか?」

邪推もしておいた。なにせ、コイツがフジオカなんぞと呼ばれているせいで、俺は混乱したのだ。

少しくらいいじめてやりたくもなる。

だが、

「まあ、そんなところです」

「……ほお」

少年は、否定、しない。動じもしない。観音開きになる鉄扉の、もう片方側に、俺を真似て寄りかかってきた。

俺とは、顔が真横同士になりながら、視線を合わせないつもりらしい。

少年の目は、家を見ていた。真輝の部屋はどこだろうか……と想像している眼差しだ。

ああ、同じ目付きを見たことがある。俺にとってそれはずいぶん前のことだが、この少年と同じ、『目当ての女の部屋を探す視線』には覚えがあった。

「あんまりじろじろ、人様の家を見るもんじゃないぞ、少年」

「減るものじゃないのに?」

「そもそも減ってもらっちゃ困るんだがな」

「ですね」
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