† of Ogre~鬼の心理

第六節

† 第六節



人は、ひとりでも生きられる。

それでも、人と群れたがる。

それは、完全な無人の空間では、人間は己を保持できないからだ――そう、真輝は言う。

俺は、それはどうだろうかと思う。

完全な無人の空間へ逃げ込む人間だっているだろう。

それは、なんのため?

もちろん前提通り、人から逃れるため。

が、人は完全にひと気を離れられないのなら、逃げても逃げても、見つけてほしいという願望が根元にあるということになる。

それでは定義の混濁と矛盾だ。

難儀だと思う。難儀だと思うし、面倒だとも思う。

しかも、答えは簡単にはでないときた。

そんなことを考えるのは、だから結構前にやめたというのに……

どうにも皿洗いというのは、無駄なことを考えたくなる作業らしい。

スポンジを揉んで泡を復活させながら、なんとはなしに、また無駄なことを考える。
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