† of Ogre~鬼の心理
今まで隠蔽されていたにせよ、ここまでの気配に気付かなかったなど……不覚も不覚だ。

(ちっ。気配を感じるだけに、『そっち』に集中しすぎたか!)

とっさに、強く路面を蹴りつける。

通りの石畳が砕けたことに数人が振り返るが、その時にはすでに、俺の体は宙にあった。

すぐそばにあったコンビの屋根に着地した俺を、ゆっくり小道から出てきたヤツは、見上げてくる。

図り合うのとは違う純粋な睨み合いを一瞬だけ交え、ヤツが、飛んだ。

俺同様、人目に触れない速度で舞い、屋上のコンクリートを踏んだヤツは、一拍を置いて、口を開いた。

「アレと同じにおいね。――アナタ、アレの仲間かしら?」


アレというのがなんなのかわからなかったが、ヤツが指差した先を見れば、様々な点で納得がいった。

それは、蝙蝠。

目の前にいるヤツの『さっきまでの気配』は、その蝙蝠から発せられていた。

恐らくアルが監視としてつけていた蝙蝠を落とし、乗っ取ったのだろう。
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