† of Ogre~鬼の心理
(まったく、己の眷属を取られるとは、なんと愚かしい)

苦笑すら甘い俺に、ヤツはもう一度問うた。

「それで、アナタ、アレのお仲間かしら?」

恐らく、俺がアルの服を着ているせいもあって、小さな勘違いをされているのだろう。

ちっ、ヤツの服には洗っても漂白しても落ちない、特殊なニオイでもついてるのか。

「いや、ただの知り合いだ」

と、首を横に振る。

「親しい仲ではあるが、俺は人間だ。少なくとも、血を飲むような嗜好はない」

「そう、人間なのね。――でも、魔の気配を感じる」

ヤツの手が、するりふわりと、胸元に構えられる。

「ならば、ただの人間でもないのでしょう!」

そして断言と共に、ヤツの手はまっすぐ俺へ差し向けられた。

その手先から、目には見えない殺傷力が飛来してくるのを、感覚で捉える。

俺は、

「それがどうした!」

それよりわずかに早く、空中でマジックを走らせていた。

宙のただ中に、黒字が刻まれる。
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