† of Ogre~鬼の心理
俺以外のどんなヤツにも、ただでたらめに波打った模様にしか見えないだろうそれは、しかし、ひとつの意味を持っている。

刹那、その意味を実現するために、空中の文字は足元へと染み込む

――と、木が生えるようにコンクリが立ち上がり、一瞬で俺の目の前に壁を作り上げた。

急造ながら分厚いシールドに、ヤツの放ったなにかが硬くぶち当たる音がする。

俺は、その音を最後まで聞くつもりはない。

必要ならば全力を出すが、避けられる戦いはとことん避ける。

戦う意義を問うた場合、その答えが曖昧模糊としていたなら、なによりも逃亡を選ぶことが俺達の生活のルールにもなっているからだ。

肝心なのは、必要性。

自分のなにかを懸けて、目の前にあるなにかと、戦わなければいけないか。

戦わなければ、自分は生きることができないか。

是非を問い、俺は今、その必要性を否定した。

だから逃げる。
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