† of Ogre~鬼の心理
(いや、平和だからこそ、私達も暮らしているのだけど)

私の買った服の紙袋を両腕に提げる風間が、言った。

「綺麗だねぇ」

と、なんとも間の抜けた、ズレのある言葉。

「やっぱりさ、なにかを糧に発生する現象って綺麗だよね」

「……」

一瞬、まさかまさかで、コイツはあの爆発がなんなのか知っているのかと思ったが、

「空気中の酸素を吸収してさ、花が咲いたみたいだ。うん、綺麗。僕、花火って好きだな」

彼はうわべ程度の理科的な話をしていただけだった。

しかも、あの爆発を花火と見るか。ますますもって、太いヤツだ。

「興味ないわ」

切り捨てて、止めてしまっていた足を動かす。

「それよりアナタの目的地ってまだなの?」

彼は、僕の用事は後回しでいいよ、とレディーファーストを気取り、私の買い物を先に済ませた。

そしてしたたかに、私を自分の用事に付き合わせようとしている。
< 94 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop