ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
それだけ言うと、店に戻る。
俺の姿を見つけると、雅哉が慌てて走り寄ってきた。
「先輩っ、梓さん心配なのは分かるけど、お客さん置いて行くの勘弁してよ」
情けない顔をして、俺にしがみつく。
そうだよな、雅哉にはまだちょっと荷が重かったか。
俺もどうかしていた。気が動転して……というやつだ。
「で彼女たち、どうしてる?」
今まで泣きそうな顔をしていた雅哉が、プッと小さく笑った。
「悠希たちが、ホストよろしく相手してるよ」
はぁっ!? ホストだってっ!?
カウンターからこっそり覗くと、あの5人相手ににこやかに話をしてるじゃないかっ!
な、何というか、やっぱり若いって言うのは戦力になるな。特にあいつらは、男の俺から見てもイケメンで性格もいい。
少し眺めていようかとも思ったが、レクチャーの途中で勝手に抜けだしたわけだし、そうもいかないか。
「雅哉、すまないけど、梓に何か食べるもの持っていってやって」
「今晩のまかないの、ポテトグラタンとチキンサラダでいい?」
「おう、頼む」
そう言い残すと、奥の席へと向かった。