ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「勝手に抜けてしまい、申し訳ありませんでした」
頭を下げてから、元いた場所に腰を下ろす。
「遼さん、すごい勢いで出て行くんだもの。びっくりしたわよ。でも、こんな可愛い子を隠してるなんてヒドい。蒼太くんが私のお気に入り」
そう言って、蒼太の頬にキスをした。お、おいっ、何してんだっ!?
嫌味のひとつでも言われるかと思っていただけに、拍子抜けだ。
っていうか、さっきまでの態度は何だったんだ。俺に気があったんじゃないのかっ!
まぁでも、助かったと言えば助かったわけだけど……。
しかし、いつまでもこのままじゃいけない。蒼太たちにも本来やらなければいけない仕事がある。
金曜の夜は、これからが忙しくなる時間。さっさと持ち場に就かせないと大変だ。
「じゃあ、続きを始めましょうか。蒼太、悠希、智成、ご苦労さん」
目で『早く行けっ』と合図を送ると、3人は急いでカウンターの奥へと向う。
彼女たちは名残惜しそうにしていたが、素知らぬふりをしてレクチャーを進めた。
その後、何度か席を外しながら約2時間、カクテルの定義や歴史、バーでのマナーや楽しみ方などを説明し、カクテルと食事を楽しんでもらった。
「と、基本はこんなとこでしょうか。何かご質問がありましたら、どうぞ」
初めてのことで緊張したが、彼女たちの満足そうな顔を見てホッとする。
特に質問はなかったが、「またお願いしたい」と言われ第二回の開催も決まり、今回のレクチャーは終わりを迎えた。