ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
この穏やかな目は、何を語っている?
少しの不安を感じながらも、動揺を悟られないように質問を続けた。
「何、考えてる?」
「ねぇ遼さん。まだ一ヶ月経ってないけど、あの契約、破棄してもいい?」
今、何て言った? 契約を破棄?
この期に及んで破棄とはな……。
いったい、どこをどう考えれば、そう言う結果が導き出されるんだろう。
梓の気持ちが分からないだけに、戸惑ってしまう。
けれど、破棄を認める訳にはいかない。
そんなこと、俺がさせるわけないだろうっ!
腕を掴んでいる手に自然と力が入り、俺の名前を呼ぼうとした梓の唇を塞ぐように唇を重ねた。
驚きを隠せない梓が多少の抵抗を試みるが、俺の力に勝てるはずがない。
自分が思っていた以上に我慢していたのか、梓の甘く香る唇を貪るように食んでいると、彼女の様子が変わり始めた。
それを見計らって唇を離し、耳元に顔を寄せる。
「契約破棄を破棄する」
自分でも驚くほど低く甘さを纏わせた声に、梓の身体に緊張が走ったのが分かった。
目をつぶり俺を待っているような素振りを見せる唇に、もう一度唇を重ねると、息を吸う一瞬のスキを狙って舌を差し入れる。すぐに梓の舌を見つけると、その全部を味わうように絡め続けた。
「梓、分かっと言って」
トロンとした目で俺を見つめる梓に、酔ってしまいそうだ。
四年間はしていなかっただろうハードなキスに、最初こそ遠慮がちに舌を絡めていた梓も、今は俺の動きに合わせていた。