ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
梓の美しく艶やかな唇に惑わされたか、思いのほか激しいキスをしてしまったみたいだ。
唇を離し、ほんのり赤く染まった顔を見つめていると、俺の視線に気づいた梓が目を合わせた。
激しいキスに疲れてしまったのか、力ない身体をそっと起こし抱きしめる。
「強引だったな、ごめん」
そう言いながらも、まだ物足りない俺は、梓の首筋を喰んだ。
今晩は何もしないと思っていても、この先を望んでしまいそうになる気持ちにブレーキをかける。
“契約破棄”という言葉が俺に与えたダメージは、相当大きかったみたいだ。
その反動で、梓の意識を朦朧とさせるほどのキスをしてしまうなんて……。
28にもなる大の大人が、情けない。
項垂れるように梓の肩口に顔を埋め、しばらく黙っていると、ううんと首を振った彼女が、俺を救うような言葉をくれた。
「えっと……キス……は、嫌じゃなかった……です」
敬語を使うのは、本当のことを言っている証拠。
照れくさいのか、抱いている身体をモジモジさせているのを感じると、俺の中のS心が顔を出す。
抱いている身体を離し両肩を掴むと、梓の本心を探るような真剣な眼差しで見つめる。
その眼差しに絶えられなくなったのか、梓が目線を外すと、幾分強い口調でそれを制した。
「ちゃんと俺の目を見て」
ビクンと跳ねる身体を感じ、可愛さのあまり抱きしめたくなる衝動を抑えると、黙ったまま見つめ続ける。
俺は、まだ梓から欲しい返事をもらっていない。
目だけでそれを訴えると何かが通じたのか、梓がぼそぼそと喋りだす。
「契約の件だけど……」
よしっ、来たっ!
「破棄を破棄……の方向で、お願いします」
よっしゃーっ!!
肩を掴む手に、力が入る。