ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「じゃあ遠慮無く言わせてもらう」
な、なんだ。いきなり、どうした!?
その堂々とした態度に怯みそうになるが、男の威厳を保ち余裕ある発言をする。
「どうぞ」
梓の面白くなさそうな顔が、かえって面白い。
しかしその後、次から次へと出てくる言葉に、俺は言葉を失ってしまった。
ー佐々木さんと嬉しそうにしてたのが気に入らないー
ー美人が好きなのが気に入らないー
まぁ男だからね……。バツが悪くて頭を掻く。
ー俺に引っ張られた腕が痛いー
ー俺の言葉ひとつに翻弄される……胸が痛いー
おいおい、それって……。
最後の方は聞き取るのも大変なほど小さな声だったけれど、俺の耳にはハッキリと届く。
自分の中に、何かが込み上げてくるのを感じた。
「自分でも何言ってるか分からなくなってきた……」と項垂れる梓を見て、ひとつの言葉が俺の心に落ちてきた。
可愛い梓の頭を撫でると、その言葉を問いかける。
「梓が言ってることをまとめると、俺のことを好きっていってるようにしか聞こえないんだけど?」
何かを諦めたのか、梓がゆっくりと顔を上げた。
息を呑んでその答えを待つ俺は、期待と不安で胸が張り裂けそうだ。
「好きです、遼さんのことが……」
お、俺のことを好きっていったよな?
聞き間違いじゃないよな?
期待していた言葉を敬語で言ったってことは、本心だよな?
あまりの嬉しさ驚きでで、目は見開いたままだった。