ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

聞かれたらまずいことなのか、もっと近くに寄れとばかりに右の人差し指をクイックイッと2回ほど曲げて招く。
その仕草が何となく如何わしかったけれど、呼ばれたからには仕方がない。
少し不安な気持ちを押し込め、カウンターに軽く身を乗せるように身体を近づけた。二人の距離がグッと縮まる。
不安な気持ちに交じり、ドキドキ感が増していくのが分かった。
ゆっくりとした動きで遼さんの口元に耳を寄せると、いつもより幾分低めの甘い声で話しだす。

「おためしだろうが何だろうが、俺たちは付き合ってる。彼氏と彼女だ。当然、二人の気持ちが高まれば、キスだってするし、それ以上のことだって……」

そこで言葉を切り、ゆっくりと顔を離す。いつもの柔らかい笑顔が見えてきた。
キ、キス? それ以上のこと……っ!?
遼さんの顔を見上げ、あまりのことに唖然としてしまう。
別にかまととぶってるわけじゃない。
私だって、もう26の女だ。男の一人や二人……はいないか。いやいやこの際人数は関係ないっ。思い出したくもないが、前の彼とは密度の濃い恋愛を……していたと思っていたのは私だけで、別れてみたら薄っぺらい関係だったんだと思い知ったわけで……。
もぉっ!  何を言いたいのかというとっ!
それでも一応、身体は女になっているということ!!
今更、大人の関係をどうのこうの言うつもりはないけれど……。
今回は普通の付き合いじゃないんだもん。
何回も言うようだけど、おためしだよ、お・た・め・し。
恋愛の楽しさを思い出させてくれるだけなら、それって必要?
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