ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
服を着替えダイニングに向かうと、1階の店に行っていた遼さんが、手にフランスパンと生クリームを持って戻ってきた。
「梓、フレンチトースト好き?」
「大好きだよ」
「そう、良かった」
ニコッと微笑むと、キッチンに立つ。
遼さん、その笑顔は反則です。私をどれだけ虜にしたら、気が済むの?
朝からイケメンの笑顔は、身体に悪い……。
「座って待ってて」と言われたけれど、女の私が何もしないと言うのは申し訳ない。遼さんの隣に立つと、目の前にあるカップを2つ手にした。
「私、紅茶入れるね。遼さんはストレートでいい?」
「おう、悪いな」
たったそれだけの受け答えにドキドキして……。おかしいでしょ、私っ!
まるで新婚さんの甘い朝食風景に、居ても立ってもいられない。
電気ケトルがカチッと音を立てて、お湯が沸いたことを知らせると、茶葉を入れておいたポットにそれを注ぐ。微妙に震えていた手が、お湯をこぼしてしまった。
「熱っ!!」
大量にかかったわけではないけれど、沸騰したてのお湯は、あっという間に私の手の甲の一部を赤くした。
「何してるのっ! 早く水で冷やしてっ!」
遼さんの声に、慌てて水道水に手を当てる。
しばらく冷やしていると、その手を遼さんに取られた。
「どうしたんだよ? さっきから変じゃない?」
ふかふかのタオルで私の手の水滴を優しく拭きながら、心配そうな顔をする。