ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
ヒリっとした痛みに、顔をしかめてしまう。
「悪い、痛かった?」
薬を塗る手を止めると、私の顔を覗き込んだ。
そんなに気にすることないのに……。そう思いながらも、心配そうにしている顔を見ると、嬉しくなってしまう。
無意識に顔がニヤついていたのか、遼さんが怪訝な顔をした。
「何で笑ってるの?」
ヤバい……。
最近の私は、自分の気持ちを抑えることが出来なくなってしまっている。それを踏まえて行動しないと、絶対に変な女だと思われてしまう。
顔を真顔に戻すと、手に甲に目を落とすと、遼さんがまた薬を塗り始めていた。さっき私が顔をしかめたのが気になったのか、動きがかなりゆっくりだ。その優しさにクスッと笑うと、彼の手に自分の手を重ねた。
何で? と言いたそうに、遼さんが顔を上げた。
「そんなんじゃ、ちゃんと塗れないでしょ? 大丈夫、痛くないから」
重ねている遼さんの手を、私が動かす。
やっぱり痛い。ちょっと力を入れすぎたか……。
でもそれ以上に、遼さんに触れている手が私の身体に幸せを与えてくれる。
火傷をしてしまったのは失敗だったけど、結果オーライといったとこか。
私のドジも、たまには役に立つ。
薬を塗り終えるとガーゼを当て、手際よく包帯を巻いてくれる。
「どこでそんなこと覚えたの?」と聞くと、「誰にでもできるでしょ?」と当たり前のことのように普通に答える。
いやいや、誰にでもできることじゃないからっ。
だって、私できないし……
遼さんが怪我した時には、私が手早く巻いてあげられるように今度練習しようっ。
包帯を巻いた手を胸に当てると、そう心に誓った。