ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
遼さんが作ってくれたフレンチトーストと、遼さんが淹れなおしてくれた紅茶で朝食を済ませると、手早く身支度を整えて家を出た。
「はいっ」
透かさず左手を差し出される。それが何を意味するのか、すぐに理解した。
---恋人らしく、手を繋いでさっ---
“らしく”は気になったけれど、密かに楽しみにしていた。
今までにも遼さんと手を繋いだことはある。けれどそれは一方的な感じが強かったが、今日は違う。
お伺いを立てくれてるというか、“お嬢様、お手をどうぞ”という雰囲気を醸しだしてくれている。
だからかちょっと照れくさい。
少し躊躇いながら手を重ねると、遼さんの大きな手が優しく包み込んだ。
上目遣いに遼さんを見ると、これでもかというくらい爽やかな笑顔。朝の眩しい日差しが後ろから当たって、ひときわ輝きを増していた。
「かっこ良すぎ……」
思わず口を滑らすと、遼さんが目を見開いた。
「な、何言い出すかと思ったら……」
顔を赤くして照れている姿は、とてつもなく可愛い。男の人を可愛いだなんて……。マ、マズい、またニヤついてしまいそうだ。
包帯を巻いている左手で慌てて顔を隠すと、横を向いた。
「それで隠してるつもり?」
遼さんが私を覗きこむ。ニヤついた顔がまだ元に戻っていない私は、またも顔を背けた。それをまた遼さんが覗き込む。
「もうっ、いつまで続けるのっ?」
「それは、こっちのセリフ」
プッと遼さんが笑い出すと、私も声を出して笑ってしまった。
朝から店先で、何バカップルみたいなことをしてるんだろう……。
可笑しくって楽しくって、どうしようもなく……幸せ。