ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

ひと駅分の距離は思ったほど遠くなく、割と早い時間で目的地についた。
友だちとよく来る街も、遼さんとデートに来ているんだと思うだけで胸が高鳴る。

「どこか行きたい店とかある?」

遼さんとならどこでも……。気分はそんなところだ。
今日は特に買いたいものがあるわけではない。ぶらぶらウィンドーショッピングを楽しまないかと提案すると、メインストリートを歩き出す。

この街も、随分様変わりをした。
多くのブランドショップが建ち並び、行き交う人の多さも賑やかさを増している。
特にブランド物に興味があるわけではない私でも、ショーウインドーにディスプレイされている素敵な商品の数々に目を奪われた。

「何か欲しいものがあった?」

超がつく有名高級ブランドの前で足を止めていると、遼さんに顔を覗きこまれた。ブンブンと顔を振り「ないないっ」と答えると、クスクスと笑われてしまう。

「遠慮しなくていいのに。俺さ、趣味ってものがないから、モノを買う機会って少ないんだよね。だから今日は、梓に何か買ってあげたいなと思って」

「それは嬉しいけど……」

だからと言って、こんなお高いお店で買ってもらうほど、図々しい女ではない。
それに、ブランド物には本当に興味がないからなぁ……。

「まだウィンドーショッピング始めたばかりだし、気になるものを見つけたら声かけるね」

遼さんの気持ちが嬉しくて笑顔でそう伝えると、遼さんも「分かったよ」と頷き、またゆっくりと歩き出す。
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